激しい環境変化に対処してきた中国企業

 中国の企業から斬新なマネジメントの考え方を学べるとは、あまり思われていないかもしれない。中国の国有企業の大半は規制でがんじがらめの大企業で、いまようやく西洋式のマネジメント手法を試し始めたばかりだ。ゼネラル・エレクトリックやサムスンのような世界的企業は中国からまだ登場していない。加えて、国外にいる中国人ビジネスマンも、革新的なマネジメントのアイデアを生み出すことより、蓄財に長けていると思われている。ところが今日の中国では、他のたいていの国よりもマネジメントに関する多くの教訓を得られるのだ。

 たしかに、トヨタをはじめとする日本企業が半世紀前にもたらしたTQM(総合的品質管理)やカイゼン運動、かんばん方式といった画期的なマネジメント手法は、中国で屈指の民間企業でもいまだに生み出せていない。だが、中国の企業からは昨今のマネジメントにおける喫緊の課題を学ぶことができる。すなわち、対応力、即興性、柔軟性、スピードの4つである。この4点が、中国の企業の成否を分けているのだ。たとえば香港大学の劉俏(リュウ・シャオ)と邵啟發(シュウ・アラン)の研究などによると、中国では国有企業の利益率が平均で4%なのに対し、非上場民間企業の利益率は平均で14%にも上るという。

 30年以上にわたり、環境の激しい変化に適応しなければならなかったがゆえに、中国の企業は他国の企業とは異なるマネジメント手法を身につけた。高度に統制された国家資本主義の行く末に見えていたのは、実は急速に進化する一つの巨大な生態系(エコシステム)だった。中国の企業はその中で、急激な成長と突然の失速、加速する都市化と大きな地方市場、苛烈な競争と汚職の蔓延などへの対応に苦心してきたのである。