組織デザインで
考慮すべき六要素

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図2 組織デザイン

 組織デザインという言葉は、日本ではあまり馴染みがないようだ。これは、単なる「組織いじり」ではない。組織デザインは六つの要素からなる包括的な取り組み。六つの要素とは「構造」「業務」「人材」「情報」「意思決定」「報酬」である(図2)。

 構造というのは組織構造を意味する。たとえば、事業部に営業機能を持たせるべきか、それとも、営業チームを顧客軸で整理してソリューション営業を強化するべきか。組織の階層やレポーティングラインの設計なども考えなければならない。

 組織変革を進めれば、業務も変わる。これまで必要と思っていた業務が、改めて考えてみるとムダだったということもあるだろう。また、さまざまな業務をより効果的、効率的なものに変えていく努力も必要だ。

 人材のパワーアップも重要。そのためには、人材の採用や管理、教育などを見直す必要があるだろう。たとえば、「あれはダメ、これはダメ」式の性悪説に基づく管理は、これからの時代に有効だろうか。もし、イノベーションを活性化したいと考えるなら、こうした管理手法を改める必要があるだろう。

 情報および情報システムは、組織の動きやパフォーマンスを可視化する。組織は、計測する値によって変化するものだ。営業部門のKPIが売上数値だけなら、営業マネジャーは売上だけを追いかけて部下の行動を方向づけるだろう。部下のレベルアップやチーム力の向上がKPIとして示されれば、マネジャーはこうした要素にも注意を払うはずだ。

 意思決定にもさまざまな側面がある。たとえば、トップダウンかボトムアップか、その間には無数のバリエーションがある。権限をどの程度まで現場に委譲するか、コンセンサスをどの程度重視するかといったテーマもある。

 報酬の重要性は言うまでもないだろう。しかし、多くの日本企業は終身雇用、年功序列、職能給といった従来型の報酬制度をいまも守り続けている。こうした仕組みに切り込むことなしに、組織や社員の行動を変えることは困難だ。