明治・大正期、「日本資本主義の最高指導者」といわれた渋沢栄一は、私利私欲を追うことなく、ひたすら公益を追求し、事業に成功しても、資本家による富の独占を許さず、「資本家の代表」とはならなかった。渋沢の生き方を支えたのが『論語』である。渋沢は、第一国立銀行創設をはじめ、東京海上、王子製紙、日本郵船など、日本近代産業のあらゆる分野の企業・団体の創設に関わり、『論語』に基づく「道徳と経済の両立」を指針とした実業の成功を実践してみせた。近代日本経営史の大家、由井常彦氏が、渋沢が著した『論語と算盤』を抄録し、渋沢の事業観、利益観、メンタリティについて解説する。