多くの発明、特許が
その対価を得られずにいる

 ヒトの体内には、代謝を行うために平均40リットルの水分が維持されている。しかしやけど患者の場合、皮膚の損傷のために1日37リットルもの水分が失われてしまうことがある。従来のやけど治療では痛みを伴う外科手術を行い、その後も苦しい手術を繰り返さなければならないことが多かった。

 ある時、重度のやけどを負った農業従事者に対する治療を目の当たりにしたリン・アレン=ホフマンは、彼らを救う治療法を発見することを誓った。彼女は10年に及ぶ研究に着手し、1000回以上の実験を行った。そして1999年に、正常な組織の細胞株から代用皮膚を作成する技術で特許を取得した。

 アレン=ホフマンは現在、治療・研究用途の代用皮膚を開発するストラタテックのCEO兼最高科学責任者を務める。同社は米国および世界で20を超える特許を保有する。そして2013年7月には、同社を代表する皮膚組織製品ストラタグラフトに関するFDA(米国食品医薬品局)の承認審査を完了するために、米保健福祉省と4700万ドルの契約を結んだ。ストラタグラフトによるやけど治療は将来性が期待されている。ある臨床試験では、新技術を用いて治療した患者20人のうち19人において、苦痛を伴う再手術を回避することができた。