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ドラッカーが言うCEOの4つの仕事
2000年6月、私がザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー(P&G)のCEOに就任した時、会社は危機の最中にあった。その年の3月7日、第3四半期の業績が予想を下回る見込みであると発表したところ、翌日の株価は86ドルから60ドルへと急落し、ダウ・ジョーンズ工業株価平均を374ポイント下回った。
私のCEO就任が発表された週、株価はさらに11%下がった。我々が苦境に陥っていた理由はいろいろあったが、とりわけ大規模な組織再編[注1]が挙げられる。あまりに大がかりで、しかも性急に進めようとした結果、日々の業務がおざなりになってしまった。
ただし、この2000年の夏に直面した最大の問題は、時価総額が850億ドル目減りしたことではなく、信頼が失われかけていたことだった。
リーダーの多くが自分の部屋にこもり、事業部門は業績の悪化について本社を責め立て、かたや本社は事業部門を非難するといったありさまだった。投資家や証券アナリストたちはこのような事態にびっくりすると同時に憤慨し、社員たちは経営陣に、状況の改善を求めた。また退職者たちは、退職年金が半減したことに怒りを露にした。
「P&G、投資家の信頼を裏切る」「ブランド企業の苦境──みんな、その商品は好きだが、市場がIT株に沸いているなか、P&G株は敬遠されている」など、マスコミで連日報道された。最も辛らつだったのは、有力業界紙が報じた「P&Gはまだ必要か」というものだった。
CEO就任初日の夕方6時、私はテレビ局のスタジオで、「何が問題なのか」「どのように解決するのか」と、質問攻めに遭った。私に対して、全員が全員、明確な回答を求めていたが、実のところ、私にも「どうすれば業績を回復できるのか」はわからなかった。こうして私は、これまで経験したことのない「CEOの仕事」の洗礼を受けることになる。
2004年10月、私は、ピーター F. ドラッカー──本稿における引用の大半は、その時のドラッカーの発言である──をはじめ、他社のCEOと一緒に、経営学者たちから出された「CEOの仕事とは何か」という質問について議論する場に出席した。