【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
スティーブン P. カウフマン(Stephen P. Kaufman)
ハーバード・ビジネススクール 上級講師
スティーブン E. グロス(Steven E. Gross)マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング 給与報酬部門リーダー
ディエゴ E. ヘルナンデス(Diego E. Hernández)経営コンサルタント
バリー・レスキン(Barry Leskin)元シェブロン・テキサコ CLO

[ケース・ライター]
スティーブ・カー(Steve Kerr)
ゴールドマン・サックス CLO

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

心浮き立つ朝

 ハイラム・フィリップスは蝶ネクタイを締め直し、鏡を見やった。顔をしかめながら、ネクタイの左側を引っ張って整えていると、鏡に映っている腕時計が目に入った。「そろそろ行かなくては」。しばらくして彼はリビングに下り、陽気に口笛を吹きながらコーヒー・メーカーへと近づいていった。

「あら、ご機嫌ね」と、妻が新聞から顔を上げて微笑んだ。「その曲は『アクセンチュエイト・ザ・ポジティブ』だったかしら」

「ご名答」と彼は大きな声で返事した。「やはり、あなたはポップ・カルチャーに毒されているようね」。これは2人の間で何度も繰り返されているジョークだった。