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オイル・マネーの活況再び
アメリカが巨額の貿易赤字を垂れ流すなか、原油価格は1バレル125ドル(本稿執筆時点)を突破している。このような状況の下、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールなど、ペルシャ湾岸協力会議(GCC)に加盟する石油輸出国には、使い道に困るほど潤沢な資金が流れ込んでいる。
言うまでもなく、1970年代から80年代初めに原油価格が高止まりした時期にも、これらの国々は同じ経験をしている。しかし今回、オイル・マネーの活況が生み出す光景はかつてとは異なる。
産油国はこれまで、突如流れ込んできた巨額の金に戸惑い、その管理と運用を商業銀行、それも多くの場合、アメリカの商業銀行に任せていた。つまり、原油の輸出を通じて得た富を、主に外銀に預け、短期のアメリカ国債やドルの購入に充てていたのである。
グローバル資本主義の構図を変えたり、そこにおける自国の地位を高めたりするといった野心はなく、原油がもたらした利益をただ当時の習わしに従って運用していただけなのだ。その結果、アメリカは世界金融システムの盟主であり続けた。
ところが今回ばかりは、GCC各国はオイル・マネーの使い道に戦略的な姿勢を見せている。積極投資に転じ、国内のインフラ整備に惜しみなく投資して、製造業向けに自由貿易地域(FTZ)を設けたり、企業や熟練度の高い知識労働者、旅行者などを引きつけるためのサービスや施設を充実させたりしている。
たとえば、サウジアラビアやUAEは近年、「アブドラ国王経済都市」や「サウジ・パワー・ネットワーク」といった、数十億ドル規模のインフラ整備プロジェクトを次々と進めている。
GCC諸国は先進国にも莫大な投資をしている。2007年8月、ゼネラル・エレクトリックがマサチューセッツ州にあるプラスチック事業を売却したが、これを116億ドルで買い取ったのはサウジアラビアの石油化学大手、サウジ基礎産業公社(SABIC(サビック))だった。SABICはその前年にも、7億ドルでイギリスのハンツマン・ペトロケミカルズを買収している。
2007年秋には、アブダビ政府の投資活動を担うムバダラ開発公社が、プライベート・エクイティ(PE)・ファンドのカーライル・グループや、カリフォルニアの半導体メーカーであるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)に出資した。さらに2007年11月には、アブダビ投資庁(ADIA)があのシティグループに75億ドルを出資した。