十分活用されていない
年に一度のチャンス

 多くの企業が年に一度、丸一日もしくは1週間かけて、オフサイト・ミーティングを実施している。これは、経営陣が日常業務を離れ、将来の計画を立案するために、リゾート地、会社の近くにあるマリオット・ホテル、あるいは社内の会議室で開かれる。

 このような会議には、結構なコストがかかる。アメリカ企業は実際、出席者への会議手当だけで年間数億ドルを費やしている。にもかかわらず、会議の主催者や出席者たちは、オフサイト・ミーティングを得がたいチャンスと見てはいない。会議の後にゴルフに興じること以外は、通常の会議と変わらないと思っているからだ。しかし、経営陣が参加するオフサイト・ミーティングには、ほかの会議にはない重要な特徴があることを忘れてはならない。

 オフサイト・ミーティングは、CEOもしくは部門長の招集によって開かれる。実際はほかのだれかが企画・進行するにしても、主催者はあくまでCEOであり、その指示の下に企画される。そして、その成果によって評価されるのもCEOである。

 また経営陣が、戦略にまつわる問題を数日かけてじっくり話し合えるのは、この時くらいである。したがって、オフサイト・ミーティングは、通常の経営会議以上の期待を持って実施される。

 またオフサイト・ミーティングの議題は、通常の経営会議よりずっと多様である。なぜなら、この場では、「新しいコア・コンピタンスをどのように構築するか」といった具体的な問題だけでなく、「将来、どのような事業分野に進出するか」といった大局的な問題についても話し合われるからだ。

 したがって出席者たちには、目先だけでなく、3年先から10年先まで見通し、また自部門のことだけでなく、組織全体を俯瞰し、さまざまな種類の情報に基づいて総合的に判断することが求められる。

 業務会議の場合、目的は限定され、報告や戦術に関する話し合いにそのほとんどが費やされる。しかし、オフサイト・ミーティングの場合、しばしば推測の域を出ないあいまいな情報や問題が取り上げられる。これらは、多くの執行役員にとって、およそ得意とは言いがたい類のものである。

 そのため、オフサイト・ミーティングは、「大失敗だった」と言われることも少ない代わり、半年後や1年後に、「あの会議によって、会社のあり方が一変した」と評価されることも少ない。