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意思決定をめぐる3つの学派
人は決断を下す時、間違いを犯す。もちろん我々は皆、自分の経験からそれを知っている。だが万一知らない人がいた時のために、「人間とはいかに間違いを犯しやすいか」を証明する実験結果が、近年では次々と報告されている。「ヒューリスティックとバイアス」と呼ばれるこの分野の研究は、意思決定の仕組みを理解するための中心的な学問手法となった(ただし、その派生分野である「行動経済学」のほうが一般には馴染みがあるかもしれない)。この分野の専門家は、企業や政府、金融市場に大きな影響を持つようになっている。代表的な3冊の関連本──ダン・アリエリー『予想どおりに不合理[注1]』、ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー[注2]』、リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン『実践 行動経済学[注3]』──は一般の人々にも広く知られている。
ここまでは何の問題もない。この分野の研究からは極めて重要な知見が大量に得られている。そうした知見がなければ、我々の世界観、そして意思決定に関する我々の理解は、いまよりはるかに貧弱であったことだろう。
とはいえ、意思決定の仕組みを考えるのに役立つのは「ヒューリスティックとバイアス」の手法だけではない。学問の世界だけに話を限っても、はっきりと考え方の異なる3つの学派がある。いまでこそ「ヒューリスティックとバイアス」は主流となったが、これまでの50年間は他の2つの学派と影響を与え合い、時には戦ってきた。残る2つの学派のうち一つには「決定分析」という正式名称がある。もう一つの学派は、我々人間が見かけほど愚かでないと証明している点が最大の特徴といえるだろう。