デジタル情報過多による弊害に対処する

 現代の職場における決定的な問題は、デジタルオーバーロード(デジタル情報過多)だといえるだろう。昼夜を問わずデスクトップ、ノートPC、タブレット、スマートフォンからメッセージやアラートが舞い込むため、仕事に集中したくてもほとんど不可能な状態である。その一方で仕事を先送りにしたければ、クリック一つで現実逃避ができる。

 常時接続というこの文化は、我々のオンとオフの双方に害を及ぼしている。我々はさほど重要でない情報や対話に時間、注意、エネルギーを浪費し、たえず忙しくしている割には価値をほとんど生み出していない。

 スタンフォード大学の教授(コミュニケーション専門)だった故クリフォード・ナスらが示したように、常に複数のタスクを処理する人は、一つのことに集中する人と比べて仕事に注意を払わず、仕事を覚えず、仕事を管理しない。その結果、職場でも家庭でも生産性と取り組みの熱意が低下する。ビジネスマン、研究者、コンサルタントから成る非営利団体であるインフォメーションオーバーロード・リサーチグループによると、米国の知的労働者は、膨大かつ増大傾向にある情報の流れに対処するために自分の時間の25%を無駄遣いしており、米国経済に年間9970億ドルのツケが回っているという。