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「ジョブ・マッピング」で
イノベーション・チャンスを見つけ出す
人は何らかの「ジョブ」を処理するために、製品やサービスを「雇う」。これはだれもが知っていることだ。オフィス・ワーカーはワープロ・ソフトを使って文書を仕上げ、ICレコーダーを使って会議の記録を取る。外科医はメスを使って軟組織を切り分け、電気焼灼器によって止血する。また清掃員ならば、手の汚れを洗い落とすために、ハンド・ソープとペーパー・タオルと洗浄剤を使う。
いずれも自明のことに思われるだろうが、「ジョブを完遂する」という観点からイノベーション・チャンスを発見しようとする企業は皆無に近い。多くの企業が、イノベーションを実現しようと努力しているが、せいぜい淡い希望を抱いて顧客にインタビューするといった域を出ていない。そのような場当たり的な質問では、時には有望な情報のかけらが得られることもあるとはいえ、素晴らしいアイデアや成長機会が明らかになることはない。
我々は、イノベーション・チャンスを発見する新たな手段となりうるシステムを開発した。シンプルだが効率的なこの方法を、我々は「ジョブ・マッピング」と名づけた。この方法では、顧客が解決したいと考える課題を一つのプロセスとしてとらえ、これを各ステップに分解する。
このように、ジョブの出発点から完了までのプロセスを分解することで、顧客が製品やサービスについて追加の支援を望んでいるポイント、つまりそのジョブにおける各ステップのポイントをもれなく把握できる。
ジョブ・マップがあれば、顧客が使用している製品やサービスが抱えている最大の欠点を分析することも可能になる。また顧客自身も、課題を解決するに当たり、どれくらいうまくできたのか、その程度を測定する基準を備えた、総合的なフレームワークを確立できる[注]。
ジョブ・マッピングがプロセス・マッピングと大きく異なっているのは、顧客の行動ではなく、各ステップでどのような目的を達成しようとしているのか、その内容を特定するところである。たとえば、麻酔医が外科手術中にモニターをチェックするのは、目的を達成するための手段的な行為である。患者の生体情報の変化を見つけ出すことこそ、麻酔医が処理すべきジョブの内容である。
ジョブを成し遂げるプロセスの全ステップをマッピングし、革新的なソリューションを開発するチャンスを探ることで、顧客への提案を差別化する新たな方法が見えてくる。
顧客のジョブを解剖する
我々は過去10年にわたって、B2BサービスやB2Cサービス、耐久財や消費財、化学製品、ソフトウエアなど、さまざまな業種のさまざまな製品やサービスについて、ジョブ・マッピングによるコンサルティングを提供してきた。その結果、顧客のジョブには「3つの基本原則」があることが明らかになった。