ネットやERPとつながり、進化するディープラーニング
――ディープラーニングをベースに、今後はどのようなソリューションを展開していく予定ですか。

ディープラーニングの特徴の一つは、自動化技術なので、ある程度汎用化できること。ですから、基本的には、クラウドで標準的なシステムを提供するといった方法をとっています。現在、それをいろいろな業界に横展開している真っ最中です。
将来的には人工知能アプリケーション・プラットフォームとしてオープン化する予定です。ネットのデータはもちろん、ERPともつながるし、データが入ればどんどん学習していきます。我々は「インダストリー5.0」と呼んでいますが。
――ディープラーニングが進化すると、どんな世界がやってくるのでしょうか。
あらゆる業界で、需要に合わせて物事を決めることが可能になります。小売店舗の場合、たとえば「今日は〇〇小学校で運動会がある」といったソーシャルデータから需要側の要求がわかるので、店舗側はお弁当やおにぎりを多く仕入れておくというように、需要と供給の最適解が出てきます。
工場の場合、たとえば製品生産の需要が盛り上がっていて、なおかつ、間もなく故障しそうな機械があれば、ラインを止めて機械を修理するのと、壊れるギリギリまでつくり続けるのと、どちらが最適解であるかを出してくれます。
電力会社であれば、電力需要に合わせてエネルギー供給量の最適化を図ることができるようになるでしょう。また、店舗や会社にまったく人がいないのに、エアコンや電気がつけっぱなしで、無駄にエネルギーが使われることもなくなるでしょう。
街に連動させれば、混雑度コントロールも可能です。たとえば、自動運転は自動車が自律的にコントロールするのではなく、街全体の交通量自体をコントロールすれば、信号はなくなり高速走行ができます。人工知能によって街における交通の全体最適を図れば、時速100キロメートルで走行しても、衝突したり、人をはねたりすることはなくなるかもしれません。
――ビジネスはどう変わりますか。
これまで、ほとんどすべての企業は地域や顧客をはじめ、一部のターゲットやテーマに沿った商売をして部分最適を行ってきました。こうした世界に、アマゾンやアップルのような人工知能を武器に、全体最適で業界を変える企業がどんどん登場してくると思います。ビジネスの発想は大きく変わるかもしれません。
(構成/竹内三保子 撮影/宇佐見利明)

