取締役が果たすべき使命

 取締役会は機能不全に陥っている。エンロン事件後に実施された規制改革の第1波から10年以上が経過し、国際コーポレートガバナンスネットワーク(ICGN)などの独立監視機関が相次いでガイドラインを公表してきたにもかかわらず、ほとんどの取締役会は基本的な使命を果たしていない。

 すなわち、経営陣が長期的な価値創造に向かうように厳しく監督してもいなければ、戦略を支援してもいないのである。これは私見に留まらない。取締役たちもまた、取締役会の機能不全を認めていることが、我々の調査で明らかになっている。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーが2013年に取締役772人を対象に実施した調査によれば、自身の参画している取締役会が「自社の戦略を十分に理解している」と答えた人はわずか34%だった。「自社がいかに価値創造をしているかを熟知している」との回答は22%、「業界動向を十分に把握している」との回答に至っては16%に留まった。