顧客は購買行動に
時間をかけなくなる
デジタルマーケティングの普及により、市場もマーケティングも大きく姿を変えていくだろう。一言で言えば、「物を買うのに時間をかけないようになる」。商品だけでなく、購買チャネルにおけるコモディティ化が進み、最適なタイミングで最適品質の品が推奨される仕組みが定着する。
その結果、かつては個々のメーカーが独自のブランドを構築し、独自の関係を維持してきたが、現在では一部がサブブランド化している。例えばeコマースで商品を購入する人たちは、「そのサイトが信用できるから」とアマゾンや楽天のブランドを信頼しているのであり、個々の商品ブランドへの関心は薄れている。だとするならばメーカーは、ワン・ツー・ワン・マーケティングの強化版のような直販手法を構築していくなど、新たな検討策を模索する必要がある。
現在はまだ、デジタルマーケティングの影響力や守備範囲は見極められていないし、膨大なデータをいかに使いこなすかなどの研究は道半ばだ。練れていない、と言ってもよいだろう。しかし今後3~5年もすれば、一定の使い方の水準が確立し、誰もが気軽に使えるようになるのは間違いない。
それはとりもなおさずマーケティングの基礎的な概念として指摘される、「right product(適切な製品)を、right price(適切な価格)で、right quantity(適切な数量)を備え、right place(適切な場所)で、right time(適切な機会)に提供する」を根底から支援するものである。購買行動の全行程を分析できるため、ブランド力の維持や品質の向上などに新たな発想が生まれるし、企業はそれに挑戦していかなければならない。
(構成・まとめ/船木春仁 撮影/宇佐見利明)