ライフサイエンスへの応用でがん治療にも期待
――人工知能、ディープラーニングは、今後どういった分野への応用が期待されますか。

一つは製造業で、ロボット同士が協調し、生産工程が自動的に進化していくような仕組みに現在、着手していますが、組み立て型の製造業だけでなく、今後はプロセス型の製造業においても応用が期待されます。たとえば、製鉄やガスの精錬など、物質が連続的に変化していくような場面において、データをリアルタイムで取得し、危険が起こらないよう、また生産効率を最大化するようリアルタイムで制御していく、そういった分野にも取り組んでいきたい。
輸送用機器では現在、自動車の自動運転技術の開発に取り組んでいますが、自動車以外にも飛行機や船など、あらゆる交通機関で機械学習や人工知能が活用できないか、広く模索しているところです。
注目すべきは、ライフサイエンスです。データドリブンなライフサイエンスの研究開発がディープラーニングによって加速度的に進化しています。これまで解明できてこなかったガンについても診断方法の精度が上がってきており、大量のデータを集めることで、少しでも仕組みの解明に向け、立ち向かっていけたらと考えています。
こうしたアプリケーションを実現していくうえでは、ネットワーク自体の進化も重要になってきます。IoT時代は、データ量やデータの種類の増大により、クラウドにデータを集めることが困難になるとともに、人手による処理の限界が課題としてあげられます。データ処理の方法、アーキテクチャそのものが大きく変わっていくなかで、ネットワークデバイスの開発にも中長期的には取り組んでいきたい。
――IoTであらゆるものがつながり、吸い上げられたデータを人工知能がリアルタイムで分析し、制御していくような未来社会とは、どのようなイメージですか。
いままで想像できないくらいの効率的な社会が実現しているのではないでしょうか。たとえば、交通の最適化は局所的な最適化に留まっていたため、交通渋滞を減らすことがなかなかできませんでした。飛行機の運航システムも人手によるところが大きいため、気象状態が変化するとたちまちスケジュールが狂い、必要以上に遅れてしまう。リアルタイムに全体の状況を見ながら判断するのは、人では難しい。そこが機械化されると、リアルタイムで全体最適が実現していくと思います。
人手に頼っているために、適切ではあるが対処が遅れてしまっているようなことが極限まで効率化できると、おそらくストレスのない社会ができるのではないかと思います。
(構成/堀田栄治 撮影/西出裕一)

