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ソーシャルメディアとブランディング
フェイスブックとユーチューブの時代、ブランド構築はやっかいな課題となった。これほど面倒なことになるとは誰も思っていなかった。10年前、ほとんどの企業はブランディングの新しい黄金時代の到来を歓迎していた。デジタルの世界に自社ブランドをくまなく行き渡らせようと、広告代理店や技術者の大部隊を雇ったものだ。「バイラル」「バズ」「ミーム」「スティッキーネス」(粘着度:ウェブサイトへの再訪率)「フォームファクター」(形態を決める要因)といった言葉がブランディングの共通語となった。ところが、華やかに喧伝された割には、この種の取り組みはほとんど成果を生まなかったのである。
企業はデジタル戦略の中核を担う切り札として、いわゆる“ブランデッドコンテンツ”に巨額の賭けを行った。こう考えたのである。「ソーシャルメディアによって、我が社は伝統的メディアの頭越しに直接顧客と関係を築けるようになる。顧客に素晴らしい物語を伝えてリアルタイムのつながりを持てば、我々のブランドを拠点として顧客のコミュニティが生まれるはずだ」──。多くの企業がこのビジョンを実現しようと何十億ドルも投資した。ところが、いままでのところネット上で有意義な顧客の関心を集めることができた企業はほとんど存在しない。それどころか、ソーシャルメディアはブランドの重要性を減らしてしまったかのように見える。なぜこんな事態になってしまったのだろうか。
この謎を解くには、「文化として何か新しいものを生み出した時にブランドは成功する」ということを思い出す必要がある。そしてブランディングとは、文化的レレバンス(妥当性)を生み出す一連の手法の集まりなのだ。デジタル技術は強力なソーシャルネットワークを生み出しただけでなく、文化の仕組みまで劇的に変えてしまった。いまやネット上の群衆(デジタルクラウド)が極めて有能かつ多作な文化のイノベーターとして機能している。