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音楽が鳴り止むまで踊り続けるしかない
シティグループ会長兼CEO(当時)のチャック・プリンスは、2007年7月9日に「音楽が鳴り止んだら、流動性の面でやっかいな状況が起きるでしょう。ですが、音楽がかかっている限りは、立ち上がって踊らなくてはなりません。私たちはいまも踊っています」と発言した。この言葉は悪評を買ったが、プリンスに邪心はなかった。日本にいる記者たちに、米国のサブプライム不動産ローン市場の雲行きが怪しくなっても、この市場で巨額の融資を行うシティグループはさらなる融資を手控えるつもりはない、と念押ししようとしたのである。
それからわずか1年2カ月後、サブプライムローン絡みの損失で苦境に陥ったリーマンブラザーズが連邦破産法第11条の適用を申請し、それが引き金となってグローバル金融システムが融解(メルトダウン)の危機に陥った。不動産ローン市場の崩壊を受けて、多数の米国人が住宅を失った。また、シティグループを救済するために、納税者は総額で実に4760億ドルもの融資焦げ付きや保証料を穴埋めさせられた。1世帯当たりの負担は約4000ドルにも上る。
このような状況下、冒頭で紹介したプリンスの発言は、「シティグループなどの金融機関が取った途方もないリスクを正当化しようとするものであり、傲慢極まりない」と受け止められるようになった。