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投資評価手法がイノベーションを阻害している
優良企業で熱心に働く敏腕マネジャーたちの多くが、なぜこれほどまでにイノベーションに手こずるのだろうか。何年も前から、我々は首を傾げてきた。さまざまな調査がいくつかの原因を指摘し、また書籍や雑誌でも論じられてきた。
たとえば、企業が収益性の高い顧客ばかりに注意を向け、要求の少ない顧客はリスクを承知で放ったらかしだったり、新製品を開発してもその実、顧客が望んでいるようなものではなかったりといったことだ。
イノベーションの頓挫には、財務分析の誤用──それは3種類ある──が明らかに加担している。その結果、以下のような問題が間違いなく起こっている。
・投資機会を評価するに当たり、DCF(割引キャッシュフロー)とNPV(正味現在価値)を用いると、イノベーションへの投資を続けることで得られる実質利回りと実益を軽視する。
・将来投資を評価する際、固定費と埋没費用を考慮する。しかし、その方法はチャレンジャー企業には不利に働き、またその攻撃に応戦する既存企業には足かせとなっている。
・株価の上昇、ひいては株主価値の創造の主たる要因の一つ、EPS(1株当たり利益)を重視するあまり、他の要因をなおざりにすると、すぐには成果が期待できない投資から経営資源を遠ざけてしまう。
補足すると、これらの手法やコンセプトそのものはけっして悪ではない。とはいえ、これら一般化している投資評価手法は体系化されているがゆえに、イノベーションを阻むバイアスを生み出す。
我々はこれまでの経験から、別の方法を推奨したい。これならば、その将来価値に目を配りながら、イノベーションに取り組めるようになるだろう。ただしその目的は、あくまでこれらの問題に光を当てることであり、専門知識に詳しい人たちの奮起を促し、問題の調査と解決につながることを期待している。