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公開企業はPEファンドに学ぶべき
「プライベート・エクイティ」(PE)という言葉は、人々の心に感嘆と羨望を呼び起こし、多くの公開企業のCEOに恐怖を感じさせる。これらPEファンドは、論争になるほど莫大な金額を手にしており、その一方、これまで対象としていなかった大企業にも触手を伸ばしつつある。
実際、イギリスの金融調査会社ディーロジックによると、いまや1件当たり10億ドル規模を超えるPEファンドの買収総額は全世界で、2000年には280億ドルだったのが、2006年には5020億ドルまで増大している。また、金利の上昇と政府の監督強化でPEファンドを取り巻く環境は厳しくなっているにもかかわらず、2007年上期だけですでに総額5010億ドルに達している。
このような成長に棹差しているのが、PEファンドは投資価値を著しく高めるという評価である。PEファンドが高い投資利回りを実現している背景には、次のような要因が存在する。
たとえば、PEファンドのポートフォリオを管理するマネジャーとそのポートフォリオを構成する各企業の経営陣に、魅力的なインセンティブを用意する。また、デット・ファイナンス(社債や借り入れによる資金調達)を活用し、節税効果を追求する。キャッシュフローと利益率の改善に徹底的に集中する。そのほか、公開企業のような制限がない等々──。
ところが、PEファンドの成長と高利回りを裏で支えている要因については、ほとんど目が向けられていない。それは、PEファンドの仕事が、企業を買収し、いっきに業績を改善させた後、売却することなど、言うまでもないことだからであろう。とはいえ、PEファンドの成功の要とは、事業と投資ポートフォリオ・マネジメントのコンビネーションにほかならない。
公開企業は、所有し統合するために企業買収を行う。その際、PEファンドの「売却目的の買収」というアプローチを学び、利用することはより有益と考えられる。
そのためには、まずPEファンドがこのアプローチをどのように用いているのか、その効果的な利用法について理解する必要がある。
PEファンドの得意技
公開企業にとって、売却目的の買収というアプローチは魔法の杖ではないことははっきりしている。たとえば、被買収企業と自社ポートフォリオの既存事業との間に有意義なシナジーが生じる場合、このアプローチは意味をなさない。また、長期的な有機的成長(M&Aに頼らない成長)を志向するならば、いかに買収によって利益が得られるとしても、適当ではない。