合理的な解がない状況こそ
マネジャーの仕事

 誰であれ、マネジャーたる者は難しい決断をしなければならない──それが仕事の一部である。なかでも困難を極めるのは、曖昧な領域──グレーゾーンにおける決断だ。すなわち、自分とチームが懸命にデータを収集し、できる限りの分析を行ったにもかかわらず、依然として対処法がわからない状況での決断である。そのような難題に直面したら、身動きが取れなくなりがちだが、それでもリーダーとして決断を下し、前に進まなければならない。自分の判断が命運を分けるのだ。

 判断とは何かを定義するのは容易ではない。それはあなたの思考、感情、経験、想像力、性格の融合物だからだ。しかし、本稿で紹介する5つの実用的な問いかけを使えば、データが不完全または不明瞭である場合や見解が分かれている場合、答えが明確とはとうてい言いがたい場合でさえ、正しい判断を下せる確率を高めることができる。

 これら5つの問いの出所だが、幾世紀にもわたりさまざまな文化において、重い責任を担う人々が難題に取り組む中で導き出された。言わば、人類の歴史において最も洞察力あふれる知見と慈悲の精神の表れである。MBAの学生の指導や企業幹部のカウンセリングの場で、私は長年これらの問いに頼ってきた。マネジャーやそのチーム、組織がグレーゾーンの中でも最もグレーな領域を切り抜けるうえで、一連の問いが役立つだろうと確信している。