栗田工業の水利用モデルを
グローバル展開

 IoT事業体制のスタートから2年が経過し、共創プロセスにより顧客企業のビジネスモデルを大きく変革するような事例も出てきている。たとえば産業用水処理のリーディングカンパニーとしてグローバルに展開する栗田工業の事例だ。同社は従来、顧客に対し産業用水処理に関する装置・薬品の販売と保守・管理を手がけていたが、海外市場のさらなる展開を視野に、システムの刷新とサービス事業の高度化を検討していた。

 東芝は、UXデザインアプローチに基づくビジネスコンセプトの共創を実施し、「安心の水利用モデル」を作り上げた。新たなビジネスは顧客に対し、高品質な水処理サービスとこれに必要な薬品を提供するもので、独自のセンサーを用いて、水処理装置に投入する薬品の濃度や、水処理効率を制御する。東芝は、センシングデバイスから情報を収集し、情報共有のためのポータルサイトを介して情報提供する水処理遠隔監視サービスの仕組みを構築した。今後30ヵ国、約1万拠点での稼働を予定している。

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水処理管理サービス「S.sensing」の全体概要図(出所:東芝)

「グローバル展開を迅速に行うため、新たな仕組みには標準仕様であることや、専門の人でなくても使えることが求められていましたが、当社の案は、開発部門だけでなく、事業部や情報システム部などの関係部門から、満場一致で評価されました。当社デザインセンターによるインターフェースの提案は、他社にはないポイントだったと伺っています。また、共創という視点では、今回は弊社がパートナーとして選んだ、ボーダフォン・グローバル・エンタープライズ社と一緒にしっかりと案を練り、栗田工業様にとって最適なグローバルなネットワークをご提案しました。これも良い評価ポイントとなり、結果的にご満足いただくことができたのだと思います」(沖谷氏)

 共創によるビジネスモデルの変革事例が積み重なっていくことで、産業の新しい形が生まれ、ひいては競争力強化をもたらすことになるだろう。

「見える化、遠隔監視」に始まり、「効率化、最適化」、そして「予測、自動化」を経て、現場の状況を「学習し、自律的に動く」デジタルトランスフォーメーションの世界を顧客企業とともに実現していく。東芝の挑戦はすでに始まっている。

 

・東芝のIoTサイト:
 http://www.toshiba.co.jp/iot/index_j.htm
・栗田工業様の事例:
 https://www.toshiba.co.jp/cl/case/case2016/ktk.htm