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21世紀に入ると企業は、社員の能力を最大限に引き出さないと、繁栄はおろか、生き残ることさえ困難になるだろう。といっても、大量の仕事を懸命にこなさせるということではない。真に必要なのは、自分の行動に自発的に責任を持ち、職務について最上の知識を身につけ、それを他にも分かち、委譲された実質的な権限を有効に行使して、重要な問題に対する恒久的な解決策を案出することを学習した社員である。
これは別に目新しいことではない。競争が激化すれば当然、効果的な学習や広範な権限移譲、社員の貢献などがさらに要求されることは、ほとんどの経営幹部が理解している。さらに、業緒向上には緊密なコミュニケーションが不可欠であることも先刻承知のはずだ。過去20年以上も企業管理職は多様なコミュニケーション手法を採用してきた。例えば、グループ・インタビューや組織意識調査、MBWA(管理者が職場を巡回する接触管理)などの方法で、経営改善に必要な情報を伝達、収集してきた。
では何が新しい知見かというと、実はそうした周知の手法が、たとえ適切に活用されたとしても、21世紀の企業が管理者だけでなく全社員に求めるコミュニケーションと学習を阻害するという事実だ。ちなみにここで言う「学習」は、経験によって新しい適応法を習得することである。筆者は長年にわたって、管理者が経営の実態を把握し向上させる目的で、すべての階層の部下と討議する慣行を観察してきた。その結果わかったのは、管理者が比較的単純な問題解決に使う方法が、実はリストラに伴う複雑な問題解決に必要な高度な情報や鋭い状況判断に基づく行動、効果的な変革を妨げるということだ。