PwCネットワークで戦略コンサルティングを担うStrategy&がまとめた書籍『Strategy That Works』(邦題『なぜ良い戦略が利益に結びつかないのか』)が話題を呼んでいる。戦略と実行を結びつけるための「5つの行動様式」は、多くの経営者の共感を呼ぶところとなっているが、その実践には、一つひとつのハードルが高いのも事実だ。Strategy&の日本におけるリーダー、今井俊哉氏にヒントとアドバイスを聞いた。

戦略策定から実行
企業風土の変革まで支援

──『STW』を日本でいま発行する意味はどこにあったのでしょうか。

TOSHIYA IMAI
Strategy&東京オフィスのリーダー。約25年にわたり、コンピュータメーカー、ITサービスプロバイダー、自動車メーカーなどに対し、全社戦略、営業マーケティング戦略、グローバル戦略、IT戦略などの立案、組織・風土改革の実行支援などを多数手がける。富士通を経て、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンに14年在職。その後、SAPジャパン(バイスプレジデント)、ベイン・アンド・カンパニー(パートナー)を経て現職。

 私が1988年にコンサルティング業界に入った頃に比べれば、日本の経営者の経営論に対するリテラシーは確実に高まっています。多くの経営者、企業幹部はよく勉強しており、彼らが打ち立てた戦略に対し、方向性として大きく違和感を持つことは少なくなりました。

 しかしながら、優れた戦略であるにもかかわらず、傑出した成果が出ないのはなぜか。それは、「実践」や「行動」が以前と変わっていないからではないでしょうか。その点に関しては、日本人として、また戦略コンサルティングに携わる者として、忸怩たる思いと同時にもどかしい気持ちを抱いていました。理想の「戦略」を「実行」につなげ、着実に成果を上げてもらいたい。日本企業にグローバルで活躍してほしい、との思いから日本語版の出版に至りました。

──企業が「戦略」と「実行」をつなげるうえで、PwCはどのような支援を行っていますか。

 私たちPwCは、“Strategy Through Execution”をスローガンに、クライアント企業の戦略から実行までの変革を、グループを挙げて支援しています。このことは、ほかにはない私たち独自のバリュープロポジション(価値提供)だと自負しています。それは、企業の戦略策定からビジネスプロセスの具体的な構築、さらには、そこで不可欠となる企業風土や文化に至るまでのあらゆる変革を含みます。

 大企業からは、「我々と一緒に手を動かしてほしい」という要望が増えています。大企業であっても、大掛かりな変革を経験した人は限られるからです。戦略は打ち立てられても、実行の経験がある人は圧倒的に少ない。私たちはそうした経験が豊富で、一緒に手を動かすことができます。変革の支援者が一人や二人では、満足な支援はできません。私たちのグループには豊富な人的リソースがあり、質量ともに十分な支援を行うことができるケイパビリティがあります。

 『STW』で紹介した5つの行動様式のフレームワークは、こうした変革における主要な着眼点の一つとして活かすことができ、それにより、日本企業の競争力を向上することができると考えています。