経済・社会システムを一新する可能性のある“基盤”技術

 この社会の経済・法律・政治システムを形づくる決定的に重要な仕組みとして、「契約」と「取引」、そしてその両者の「記録」がある。これらは資産を守り、組織間の境界線を引く。さらに、各主体が何者であるか、これまで何をしてきたかを明らかにし、立証する。また、国家間、組織間、コミュニティ間、個人間のやりとりをつかさどる。そして組織運営や社会活動の指針を示す──。

 ところが、これほど重要なツールでありながら、ツール自体もその管理のためにつくられた官僚機構も、経済のデジタル化に対応できていない。F1のレーシングカーが朝の大渋滞につかまっているような状況なのだ。デジタル化が進む世界に向けて、その管理統制手法を整備・維持するやり方は変えねばならない。

 ブロックチェーンがこの問題を解決すると期待されている。ビットコインなどの仮想通貨の根幹を成す技術であるブロックチェーンは、開かれた分散型の台帳である。二者間の取引を効率よく永久に記録でき、後から照会もできる。台帳自体をプログラムして自動的に取引を始めさせることも可能だ(詳細は囲み「ブロックチェーンの仕組み」を参照)。