-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
「インナー・ワーク・ライフ」という新たな概念
社員に知識労働を求める企業であれば、頭脳の重要性をよく認識しているはずだろう。そして、知性あふれる人材を採用し、彼ら彼女らが有益な情報にアクセスできるようにしていることだろう。また、インセンティブの効果を理解し、社員たちの知的エネルギーの流れをコントロールするために報酬制度を用意しているに違いない。
しかしもう一つ、知識労働者のパフォーマンスを決定づける重要な要因を見落としてはいないだろうか。それは、各人が内面に抱いている「インナー・ワーク・ライフ」(個人的職務体験)である。
人々は日々、職場においてさまざまな出来事を経験し、それらに対処しているが、その結果、人々の「認識」「感情」「モチベーション」はたえず変化している。とはいえ、朝、職場のドアを開ける前に、自分の感情や精神状態をいちいち確認している人はまずいない。
あいにく現代の企業では、このような内面がオープンに表現されることはほとんどないため、経営者は、社員たちの個人的な思考や気持ちなど、いちいち気にしていられないと思ってしまうことが少なくない。
心理学者である我々は、10年ほど前、日々のインナー・ワーク・ライフに興味を抱くようになった。認識、感情、モチベーションの複雑な働きについて知りたいという知的好奇心から、我々は、インナー・ワーク・ライフの研究を始めたが、関心はそれにとどまらず、そのような作用が仕事のパフォーマンスにどのような影響を及ぼすのか、その力学を解明することへと向かっていった。これは経営の観点に基づく実践的な問いといえる。
我々はこの問題を検証するために、多数の知識労働者のインナー・ワーク・ライフを観察できる「窓」を設ける研究プロジェクトを起ち上げた。具体的には、26のプロジェクト・チームに属する238人のプロフェッショナルたちに、プロジェクト期間中、共通フォーマットの日誌に毎日記入してもらうことを依頼した。
こうして蓄積されたデータは1万2000件近くに達し、インナー・ワーク・ライフの力学と、それが社員のパフォーマンスに大きく影響していることを明らかにすることとなった。したがって、社員たちのインナー・ワーク・ライフは企業全体にも多大な影響を及ぼすといえる。
あなたが経営者ならば、自分に与えられている力の大きさにぼう然とするかもしれない。その行動次第で、社員たちのインナー・ワーク・ライフはがらりと変わってしまうからである。