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米国海軍と気候変動
米国海軍は気候変動の最前線で仕事をしている。あらゆる大陸、あらゆる海洋で何百億ドルもの資産を管理する。そうした資産──艦船、潜水艦、航空機、基地、それらをつなぐテクノロジー──は何年もかけて設計・構築され、その後何十年も利用される。つまり、10年、20年または30年後にどのようなミッションの履行が求められるか、そのミッションの実行にどのような資産やインフラが必要になるかを、いまから理解しておかなければならない。言い換えれば、将来の世界に向けた計画をその時点で立案しなければならないのだ。
国防総省は気候変動がもたらす課題をよく心得ている。4年ごとに行われる国防計画見直しの最新版(2014年発表)は、次のように述べている。「気候変動の切迫感は資源をめぐる競争に影響を与える一方、世界中の経済、社会、ガバナンス制度にさらなる負荷をかける。これは言わば『脅威の増幅器』として働き、貧困、環境劣化、政情不安、社会的緊張といったストレス要因を広く悪化させる。そして、テロをはじめとする暴力の温床となりかねない」
元大統領のジョージ W. ブッシュ、前大統領のバラク・オバマ、現国防長官のジェームズ・マティスなど、さまざまな政治指導者が、地球温暖化が安全保障にもたらす影響に言及してきた。他の多くの組織同様、海軍も、気候変動を偏った政治的な問題として扱うわけにはいかない。国防総省は、いまの計画立案の対象となる21世紀半ばには、もっと温暖化が進んで海水面が上昇し、降水パターンが変化し、異常気象の頻度や程度が高まり、その結果、国内外の多くの地域が危険にさらされ、不安定化する可能性が高いことを知っている。ここから2つの問題が生まれる(そこには悪い意味の相乗効果が働くため、海軍はその2つに同時に対応する必要がある)。