AI利活用で日本には
大きな可能性

 前述の通り課題は複数存在するものの、その多くは解決可能なものであり、日本企業がAIを活用し、経済成長を実現できる可能性は高いと我々は考える。

 実際にAI実用化に向けた積極的な動きも見られる。例えば、AI提供ベンダーである電機・通信業界について見てみよう。

 現状では、米系企業が先行しているものの、いずれもデファクトスタンダードを握るまでには至っておらず、そもそも現在のAIは元来何らかの目的を持ったアプリケーションやアルゴリズムに基づいているため、それで世界を席巻できるということではない。そのため業務の質で優れた日本企業やそうした企業と共に力を蓄えてきた日系ベンダーにも勝てる領域が必ずある。

 日本の電機大手8社のAI関連投資は、今後3年間で3000億円程度が計画されており、これは過去3年に比べて数倍の規模となっている。

 人材確保の点でも、優秀な人材であれば入社5年ほどで事業部長クラスの給与に引き上げるなど大胆な処遇改善を検討している企業や、今後1~2年でAI技術者を現状の3倍を超える3500人に増やす計画を掲げる企業もある。

 AI活用における成功要因として「アルゴリズム」「データ」「業務オペレーションへの組み込み」が挙げられるが、とくにデータと業務オペレーションへの組み込みについては、日系AIベンダーやITサービス企業がこれまでの顧客サポートを通じて得た経験に基づいたサービスでの強みを発揮できる分野である。

 日本企業がAIを活用するためのポイントをに示したが、短期的にはAI研究で先行する米国、中国と同等レベルに達するのは難しいと考えられるものの、思い切った海外人材の登用、ベンチャー企業やアカデミアとの連携によってAI領域のケイパビリティを拡充すれば、AIの利活用で日本も巻き返しを図ることは十分に可能だ。

 AI活用で重要な点は、まずは先進的な取り組みを行っている海外企業の事例を学びつつ、中長期的に日本独自のAI活用法を創出していくことである。

 日本企業がこれまで培ってきた匠の技術やオペレーションのノウハウなどをAI技術を使って継承したり、より精巧なものに磨き上げたりしていくことや、“おもてなし”の気持ちを備えた優れたサービスをAIによって幅広く展開していくなど、日本企業ならではの新たな価値創造の方法はいくらでもある。

 海外でもAIの本格的な活用はこれからである。2018年は日本企業がAIの実証実験段階を脱し、実用化へ大きく踏み出す年となるよう、我々も戦略立案から実行まであらゆる面でご支援したいと考えている。
 

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