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イノベーションの重要性が
ガバナンスを変える
イノベーションの推進という難題が、コーポレートガバナンスを大きく変えようとしている。かつて取締役会は、堅実かつ慎重な意見の代弁者として、経営陣にリスクの低減を求めてきた。しかしいまでは、いち早く競争優位を得ようと、現状を打破するイノベーションを求めるようになっている。こうした変化はあらゆる業種で見られる。特にその傾向が強いのはフォード・モーター、コカ・コーラ、ネスレ、ユニリーバなど、いずれも中核事業の伸び悩みに何とか手を打とうとしている企業である。
イノベーションを重視しつつ、それに伴うリスクを受け入れるには、取締役会と経営幹部が力を合わせる方法を新たに編み出さなければならない。ヘルスケア業界でイノベーションの先端を走るキャンビア・ヘルス・ソリューションズのマーク B. ガンツ社長兼CEOが取締役会について筆者らに語ったところによれば、経営陣がパワーポイントでプレゼンテーションを行ってから、取締役が型通りの質問をするという形式は、もはや過去のものとなった。
「方式が変わったのです」と彼は説明する。「いまでは、十分に熟していないアイデアも取締役会に投げかけ、『この件に関してお力添えをお願いします』と要請しています」。経営陣が求めているものが、答えではなく積極的な関与であることに取締役会が気づくまでに、多少時間がかかったと彼は言う。しかし、「ひとたびそれが浸透したら、取締役会と経営陣の協力体制が劇的に改善され、取締役が自社事業にもたらす価値が大幅に向上しました」