複数チームへの所属がもたらす弊害

 上級管理職のクリスティーン(仮名)は、新しいプラットフォーム「アナリティクス」の導入プロジェクトを統括している。これはクラウドベースのビッグデータ・プラットフォームであり、彼女には、期日通りに本番稼働させることが求められていたが、かなり綱渡りのスケジュールだった。

 チームは2週間前まで順調に仕事を進めていたが、それから重大な遅れが生じ始めた。彼女が一番腹立たしく思うのは、アナリティクスには何も問題が生じていないのに、部下たちが他のプロジェクトに駆り出されたままであることだった。主力メンバーのエンジニア3人とは、もう数日顔を合わせていない。他のチームの製品がセキュリティ侵害に見舞われたとかで、火消しに奔走しているのだという。会社側は何としてもアナリティクスの稼働を成功させたいと考えていたが、クリスティーンはとうとう、予定通り稼働できそうもないことをCEOに説明しなければならなくなった。

 クリスティーンの例はけっして珍しくない。「マルチチーミング」と筆者らが呼ぶ手法(社員を同時に複数のプロジェクトに割り当てること)から軋轢が生じ、世界中の上級マネジャーやチームリーダーが次第にいら立ちを募らせるようになっている。