ハブ企業の強大化は
社会・経済を不安定にしている

 世界経済は少数のデジタル・スーパーパワーを中心に回っている。一握りの「ハブ企業」が主役の座を占める、勝者総取りの世界が生まれているという、確たる証拠が存在するのだ。ハブ企業とは、具体的には阿里巴巴集団(アリババグループ)、アルファベット(グーグル)、アマゾン・ドットコム、アップル、百度(バイドゥ)、フェイスブック、マイクロソフト、騰訊(テンセント)などを指す。これら企業は利用者に実利をもたらす一方、価値全体の非常に大きな割合を獲得しており、しかもその割合は増大を続けている。この状況は経済全体の将来を左右しつつある。ビジネスの民主化を約束した当の技術が、いまや独占化をもたらしかねない脅威となっているのだ。

 ハブ企業は個別市場を支配するだけでなく、経済に張りめぐらされたネットワーク上で、基幹的なつながりを生み出して制御する。グーグルのアンドロイドやその関連技術は「競争的ボトルネック」を形成している。つまり、グーグルが接点を持つ数十億の携帯電話利用者は、製品やサービスを提供する諸企業にとって垂涎の的なのである。グーグルは取引手数料を徴収できるばかりか、情報や収集データの流れに影響を及ぼすこともできる。

 アマゾンやアリババのマーケットプレイスも、膨大な数の利用者を、多数の小売店やメーカーと引き合わせる役割を果たしている。テンセントのウィーチャットというメッセージング・プラットフォームは、世界中から何十億人もの利用者を集め、ネットバンキング、娯楽、輸送などのサービスを提供する企業にとって、消費者とつながる貴重な窓口となっている。