次のブレークスルーの発生源はどこか

 企業が新規テクノロジーを開発する際、市場がどう反応するかを、事前に正確に把握することは不可能だ。だが、新しいテクノロジーの将来は、想像するほど予測不可能なわけではない。

 筆者がテクノロジー企業でイノベーション戦略の構築や改良に携わる時は、最初にあるエクササイズを実行し、その企業が次の重要なブレークスルーの発生場所、あるいは発生すべき場所を予測できるように支援する。このエクササイズの柱は、テクノロジーの主な発展領域(たとえばコンピューティングにおける処理速度)とユーザーニーズの充足度を調査することである。この作業によって、同業他社の動きと他業界がもたらす脅威の両方を予測しやすくなり、労力や資金を集中すべき領域に関して、洞察を得ることができる。

 その例として筆者が好んで挙げるのは、家電業界とレコード業界である。両業界では何十年にもわたり、音の再現性という点で競争が繰り広げられてきた。1990年代半ば、両業界では次世代の音声フォーマットをめぐる主導権争いが活発だった。1996年、東芝、日立製作所、タイム・ワーナーなどが、優れた音の再現性と臨場感を実現する新規格「DVDオーディオ」を推進するコンソーシアムを立ち上げた。彼らはこれによって、コンパクトディスク(CD)規格の保有者でCDや音楽プレーヤーが売れるごとにライセンス料を徴収するソニーとフィリップスを、出し抜こうと考えたのだ。