流行り廃りの激しい
フィットネス業界

 筆者には、決めていることが一つある。「3人の人から聞いたことは何であれ、必ず試すべし」というものだ。2008年、友人数人からソウルサイクルの噂を聞いた。当時ソウルサイクルは創業から2年しか経っておらず、スタジオはマンハッタンのアッパーウェストサイド1カ所だけだった。すぐに興味を覚えた。フィットネスのグループレッスンは大好きだったし、日頃から走ってもいたが、サイクリングマシンを高速で漕ぐ「スピニング」はやっていなかった。インドアサイクリングを何度か試したが、楽しめなかった。けれども、友人たちは口々に「ソウルサイクルは別物だ」と請け合ってくれた。

 たしかに別物だった。まず、スタジオが長い廊下の先の奥まった場所にあり、入り口からはグレープフルーツのかすかな香りが漂っていた。スタジオには人があふれていたが、どういうわけか孤独を感じた。しかし同時に、他の会員たちとのつながりも実感した。

 筆者好みの2曲を編集したリミックスやノリのいいマッシュアップばかりが流れ、インストラクターはカリスマ性に富む本格派。インストラクターのエネルギーと、スタジオに充満する情熱はすぐに伝染した。レッスンは本当に楽しかった。終了すると、会員たちは顔をほてらせたままロビーで談笑し、歓待しているようには思えない狭いスペースにいつまでも居座っている。