従業員の学びを
企業はいかに支援するか

 企業は従業員に学習して成長してほしいと言いながらも、能力開発への対応は本人に任せ切りであることが多く、実際には従業員への研修を怠っている。筆者が最近、企業に在籍する学習者1481人を対象に調査したところ、3分の1余りは過去1年間で所属企業から研修を受けていないと答えた。調査対象者の大半は、オンラインコースを受講するマネジャーや知識労働者であり、労働者全体をより広い視野で考えると、事態はいっそう深刻である。

 米国では、雇用主の費用負担による研修を受けた者の比率は、2001年は21%だったが、2009年には15%へと減少した(入手可能な最新のデータによる)。これは景気循環のせいではない。景気後退期よりも好況期において、減少が顕著だからである。

 このため、みずからの職務をよりよく果たせるようになりたいと望む多くの人々は、自力で対処しているのが実情だ。しかし組織がMOOC(ムーク)(大規模公開オンライン講座)の受講を奨励かつ支援すれば、この状況は変わるし、公式研修の減少を補うことができる。MOOCは、コーセラやエデックスのようなプラットフォーム上で簡単に利用できる講座であり、費用も比較的安い。2008年に教育の場に登場してから、MOOCは次第に職業上の学習と関わりのある内容に移行してきた。テーマは、機械学習やJavaプログラミングからコミュニケーション、リーダーシップにまで及ぶ。従業員たちはすでにMOOCを利用して専門スキルを獲得し、独力でキャリアの可能性を広げている。にもかかわらず、企業はこの種の学習方法を企業目標の実現に役立てる機会を、いまだ開拓していない。