企業はこれまで市場における価値を固定的にとらえ、価格をめぐっては顧客と企業は敵対関係にあった。しかしこのような攻撃的なプライシングは、顧客の離反を招くだけでなく、ソーシャル・メディアの普及に伴って企業の評判にも大きな影を落としかねない。

筆者たちは、2011年にマイケル・ポーターらが提唱した共通価値の考え方をプライシングに応用することで、顧客を価値創出のパートナーと位置づけられると主張する。つまり、プライシングという顧客とのコミュニケーション・ツールを使って、顧客を尊重し、絆を深めようとするメッセージを発するのだ。

本稿では、このプライシングを進めるための5原則(顧客との関係に注目する、先を見通す、柔軟性を最優先する、透明性を高める、「公正さ」の基準に留意する)を解説するとともに、共通価値のプライシングの先進的な事例ともいえるロンドン・オリンピックのチケット価格設定について、詳しく紹介している。