経営幹部が悩む
権限委譲と職務規律の緊張関係

 リーダーは、部下たちがベストの状態で仕事に臨み、型にはまらない思考法で、瞬時に賢明な決定を下すことができる余地を与えなければならない。リーダー自身もそのことはわかっている。これはまるで決まり文句のようにたびたび言われていることだ。

 しかし問題がある。経営幹部は、エンパワーメント(従業員への権限委譲)と職務規律との緊張関係をうまく解決できないのだ。非常に難しい課題であるため、企業は頭を悩ませている。実際、マトリックス構造から自己管理チームまで、さまざまな実験が何十年にもわたって行われてきた。それでも明快な答えは出ていない。

 その理由は、リーダーが自由と管理はゼロサムだという考え方にこだわり、両極端の間で右往左往しているということが考えられる。しかし、エンタテインメント企業、航空会社、eリテールのスタートアップなど、幅広い業界の組織を数多く調べた結果、正しく設計・実行する限り、ガイドライン(指針)は自由を殺さないことを知った。それはむしろ、組織がどこへ向かおうとしているのかを従業員に明確に伝え、彼らを前向きに鼓舞し、自由を支援・促進するように働く。