価値要素のピラミッドから見える
顧客の優先事項

 今日は土曜日。ある企業のCOOはその週、合わせて数百万ドルに上る社用車購入の交渉を成立させ、上機嫌だった。彼女は自分へのごほうびとして、週末乗るためのオープンスポーツカーを買おうとしている。自分の娯楽のための買い物に使う「価格」対「価値」の試算は、業務の交渉で使った評価とはきっと別物だろう。そう考える人は多いのではないだろうか。

 実は、これら2つの計算方法はそれほど違わないかもしれない。社用車の購入判断に価格、保証、サービスレベルなど客観的な基準が含まれていたのは明らかだ。ただし、それ以外の主観的な判断基準も勘案されていた。たとえば保有する社用車は、彼女の会社のブランドイメージを反映するものでなければならない。デザインやハンドリングも、運転したり乗ったりする社員には、魅力的に映る必要がある。特に、幹部向けの高級車ではなおさらだ。

 現実には、B2Bと、消費者が何かを購入する場合の判断方法にはっきりした違いがあるわけではない。B2B企業が最適な価格を設定し、指定の仕様に合致させ、規制を遵守し、倫理基準に従う必要があるのは事実だ。調達する側は、サプライヤーを厳密に評価し、総所有コストのモデルを使って試算することで、価格と性能を軸に、合理的かつ定量的な基準に沿った分析ができるようにする。