アリババの強みは優れたエコシステム

 2014年9月、アリババは世界最大のIPO(新規株式公開)で世界の注目を浴びた。当社は現在、時価総額で世界のトップ10に入り、全世界の売上げでウォルマートを上回り、世界の主要市場すべてに事業を拡大している。創業者のジャック・マーは著名人の仲間入りを果たした。

 1999年の創業以来、アリババはeコマースプラットフォーム上で大きな成長を遂げた。しかし、浙江省寧波の海辺にある殺風景なホテルで経営陣が戦略会議を開いた2007年の時点では、まだ業界の第一人者という感じではなかった(ちなみに私が経営陣に加わったのは、その前年である)。会議では、eコマースのトレンドに関するまとまりのない見解やアイデアが、より大きな将来の展望へと収束し始め、最後には「オープンかつ協調的で、豊かなeコマースエコシステムの開発を促進する」というビジョンに合意した。アリババのビジネスが真の意味で始まったのは、ここからである。

 アリババ特有のイノベーションは、エコシステムをしっかり築いていることにある、と我々は気づいた。エコシステムとはすなわち、有機的組織体(各種の企業や消費者)同士が、あるいは有機的組織体と環境(オンラインプラットフォームや、もっと大きなオフラインの物理的要素)が相互作用を及ぼし合うコミュニティである。我々の戦略的インペラティブ(任務)は、このプラットフォームが、オンラインビジネスの成功に必要なすべてのリソース(またはリソースへのアクセス)を提供し、エコシステムの進化をサポートすることであった。