「カンバン方式」が
コミュニケーションギャップを解消する理由

「Jooto」は、カンバン方式の考え方をネットワーク上で展開するタスク管理ツールだ。ユーザーインターフェースも、ホワイトボードに付箋を貼っていく感覚でできるようにデザインされている。

 ホワイトボードを使ったカンバンとIT版のカンバンの最大の違いは、1枚の付箋に記されている情報量の圧倒的な違いである。紙の付箋では担当者名と作業内容ぐらいしか記せない。しかし「Jooto」では、付箋をクリックして開き、そこに報・連・相を書き込むので作業のすべての流れが記録される。つまり、提案内容や議論のやり取り、議論に使われた資料、非公式な意見交換などのすべてが1枚の付箋に蓄積される。

 そしてフェーズが変わっても、過去の情報はそのまま引き継がれていく。原本部長は、「あるタスクが提案され、それが完成されてリリースされるまでのメンバー間のやり取りのすべてが記録されたデータベースであり、“議事録”なのです。

 それにより仕事の透明性が高まるだけでなく共有も促され、コミュニケ-ションギャップを防ぎます。新しいメンバーが加わった時には、まずは議事録を読んでもらえば、どのように作業が進められて今に至るのかを容易に理解してもらえるという大きなメリットもあります」と解説する。

 そもそも「Jooto」は、原本部長が前職でシンガポールでソフト開発を行っていた際に、多様な民族と言語を持つメンバー間の情報ギャップを解消するための自前ツールとして開発したものだ。2017年には、プレスリリース配信サービスを展開するPR TIMESに事業を譲渡して新たな体制での更新開発を進めている。

 PR TIMESが「Jooto」の事業買収を決めたのは、企業の広報担当者が「プレスリリースを発するまでの部門間の調整の煩雑さを解消したい」とか、「突発的な事態への対応状況を一目で把握できないか」といった悩みを抱えているのを知り、そうした悩みは「Jooto」の活用で解消できると見込んだからだった。

 コミュニケーションギャップの解消は、社内ではスムーズな作業の流れを生み出し、社外にはスマートな対応を可能にして信頼の醸成につなげられる。業務やプロジェクトの流れが精緻に記録されることで透明性が高まるのは内部統制の品質向上にも資するものだろう。