科学的人事戦略を
いかに実践するか

 しかし三室社長は、「人事データを人材データに変換するためにHRテックがあり、そのデータ活用策を提供できる」と言う。

 プラスアルファ・コンサルティングが提供しているタレントマネジメントシステム「タレントパレット」のベースにあるのはビッグデータ解析とテキストマイニングの技術だ。同社副社長でタレントパレット事業部の鈴村賢治事業部長は、「人事情報の半分は文章などの定性的なデータであり、その分析にはテキストマイニングが非常に有効です。単語を分解したり品詞を判定する形態素解析と係り受けを判定する構文解析、さらに同義語や専門語などを探る辞書機能の3つが駆使されるテキストマイニングで人材データを解析できます」と語る。

プラスアルファ・コンサルティング 鈴村賢治取締役副社長/タレントパレット事業部事業部長

 例えば、ある社員が異動希望書に「もっと成長したいので、新しい事業に挑戦したい」と書き込んでいたとすると、文章を単語に分解して、各単語間の関係などから文章の要旨を捉える。上長が「誰か新事業に挑戦してくれるような人はいないか」と関連語の検索をかけると、照合結果が導き出されるイメージだ。

 人事部門には社員名簿を筆頭に、職務経歴や研修受講履歴、自己申告書、人事評価シート、適性検査結果、スキルシート、満足度調査結果など多くの人事データがある。これを一括して取り込み、分析し、見える化して活用策を探る。それはつまり顧客への最適化を図るマーケティングのように、人事における仮説と検証のサイクルを生み出せることを意味している。

 離職者のデータを分析して離職防止策を検討してみたり、仮想的な人事異動を行い、人件費の変動や営業組織で大幅な売上の変化がないか等、人事異動の影響をシミュレーションすることもできる。さらに採用機能により、採用候補者の管理から、入社後の活躍まで一気通貫した支援を実現し、活躍人材から逆引きした採用ができるようになる。

 鈴村事業部長は、「タレントパレットでは、これまで持っていた人事データに加えて、社員のエモーショナルなデータやメンタルヘルスデータなど動的なデータも取り込むことで、まさに人材データはビッグデータ化し、さらに解析の精度が向上していきます」と強調する。

 タレントパレットは、まず大企業の部門で導入され、その後、グループ会社に導入されるケースが非常に多い。「本社は、グループ会社にどのような人材がいるかを知りたいし、グループ経営のシナジーを高めたいのです」(三室社長)。

 人事という名の「蔵」に積み上げられ、眠っているデータを目覚めさせて経営にダイレクトに貢献させる。機動性があり、精度も高い分析が、経営の精度を上げることは予想に難くない。