3Dプリンターが武器になる時代

 付加製造(additive manufacturing)、いわゆる「3Dプリンティング」の時代が目前に迫っている。この技術の利用法は、近々大きく変わるだろう。思い切って導入しようとする企業のビジネスモデルも大きく変わる。

 筆者は2015年にこのテーマでHBRに論文を書いた("The 3-D Printing Revolution" May 2015. 邦訳「3Dプリンティング革命の衝撃」DHBR2016年4月号)。だが、それから3年の間に付加製造技術の能力はさらに高まり、原材料入手の容易化とサプライヤーのエコシステム拡大も相まって、ランニングシューズのソールからタービン翼まで、はるかに多様な製品を安価に生産できるようになった。しかも大量生産できるケースも多い。そのため、かつてないほど自由に製品をカスタマイズし、需要の変化に迅速に対応できる。結果として、付加製造技術は試作品製造や昔ながらの工作機械の製造といった限定的な利用法から、多くの業界でものづくりの中核を担う存在へと変わろうとしている。

 企業戦略の見地から言えば、付加製造技術は競争優位を築くための本格的な武器になりつつある。つまり、市場トップの地位を守ったり、逆にトップ企業を追い落としたり、3Dプリンターで他業界の製品をつくって多角化に挑戦したりするなどの目的に利用できるということだ。そこで、組織のリーダーは付加製造技術で現在何ができ、今後どこまで利用範囲が広がるかを把握し、近い将来どのような可能性を秘めているかを知らねばならない。本稿ではそのためのプレイブック(部外秘の定石)を披露したい。