多国籍チームで生じる衝突

 ある国際的なソフトウエア企業で、新製品に関するプロジェクトが立ち上げられた。新製品の生産を一刻も早く推し進めなければならない。プロジェクトを率いるマネジャーは、インド人とアメリカ人の社員を集めてプロジェクト・チームをつくった。

 当初からチーム内では、納期をめぐって意見が割れていた。アメリカ人は2、3週間あれば十分だと言った。しかしインド人は、2、3カ月はかかると反論した。

 プロジェクトが進むにつれて、インド人スタッフは、製造プロセスに遅れが生じても報告しなくなった。おかげでアメリカ人スタッフは、自分たちに仕事が引き継がれるはずの時期になって、初めて遅れていることを知った。

 どのようなチームでも、この手の衝突は起こりうる。しかしこのケースの場合、メンバー間における文化的相違がその原因になっていた。両者の間で摩擦が強まるにつれて、納期や報告の有無をめぐる対立が感情的なものへと発展し、ごく日常的なコミュニケーションまでもがうまくいかなくなってしまった。

 とうとうマネジャーが乗り出し、両者の仲を取り持とうとした。すると今度は、アメリカ人もインド人も、普通ならば自分たちで判断している細かな日常業務についても、いちいちマネジャーの指示を仰ぐようになった。おかげで、マネジャーは雑事に忙殺されるはめになった。

 このプロジェクトでは、そもそも遅れることを織り込んだスケジュールを組んでいたが、それよりもさらに遅れ、ついには取り返しがつかなくなってしまった。プロジェクト・チーム自体も、協力し合いながら仕事を進めていく方法を学習することもなかった。

 国籍や文化の異なる社員で構成される「多国籍チーム」には、やっかいな問題がつきまとう。文化的相違は、チームワークの障害になることがある。大した違いでなかったにしても、気づいた時には大きな損失を被っているという事態になりかねない。冒頭のケースのように、マネジャーが仲介に入ることで、かえって傷口が広がることもある。

 多国籍チームを効果的にマネジメントするには、まず対立の根底にある文化的な要因を理解しなければならない。さらに、マネジャーが介入する際には、チームを本来の軌道に引き戻しながら、同時にメンバー自身が問題に対処する力を身につけられる方法で進めなければならない。

 我々は、世界各地の多国籍チームのマネジャーとそのメンバーを対象にインタビュー調査を実施した。さらに、我々がこれまで手がけたソリューションやチームワークに関する研究結果とも照合した結果、次のような結論が導き出された。

 マネジャーがチームに介入する方法を誤ると、本来ならばチームに貢献するはずの有能なメンバーの力を引き出せなくなるおそれがある。さらにひどい場合には、メンバーの反発を招き、チーム全体の業績が上がらない可能性もあることがわかった。