社会技術としてのデザイン思考

 新しい仕事のやり方は時として目覚ましい改善につながる。たとえば1980年代に製造業界で広まったTQM(総合的品質管理)活動では、かんばん方式やQCサークルなどの手法と、「現場の作業員は、通常要求されているよりもはるかに高水準の仕事ができるだろう」という気づきが結び付いて、著しい改善を実現した。このように、手法と考察が一体となって業務プロセスに反映された場合、それは社会技術と見なすことができる。

 もう一つの社会技術であるデザイン思考も、TQMが製造分野で成し遂げたのとまったく同じ成果をイノベーションの分野で上げうること、つまり、人材の創造性とコミットメントを十二分に引き出し、業務プロセスを劇的に改善する可能性を秘めていることが、ビジネス、ヘルスケア、ソーシャルサービスなど多様な分野の50のプロジェクトを詳しく調べた7年越しの研究から判明した。

 エスノグラフィック調査、リフレーミング(視点の転換)や実験の重視、多様性のあるチームの活用といったデザイン思考のツールについては、今日ではエグゼクティブの大多数が、試した経験はないにしても、少なくとも耳にはしているだろう。