ある製品のバリエーションをいくつ提供するか決める際に、どのようなことを考慮すべきだろうか。研究者たちは、6回の実験から、一つの重要な要因を特定した。それは、消費者にとってその製品が、実用目的か、娯楽目的か、ということである。

 ある実験では被験者の学生たちに、「楽しみのために聴きたい曲を一曲選んでください」と「課題として評価したい曲を一曲選んでください」という指示のいずれかを与え、その一つを選ぶためにいくつ選択肢がほしいか尋ねた。また別の実験では、被験者に平日の通勤用の車、または週末の小旅行用の車のいずれかのボディカラーを選ぶところを想像して、質問に答えてもらった。

 どちらの実験でも、実用目的の判断を求められた人は、娯楽目的の判断を下した人に比べ、ほしいと答えた選択肢の数が少なかった。それはなぜだろうか。この調査を行った研究チームは、次のように推測する。すなわち、人間は「楽しみ」が目的になると、「自分には独自のこだわりがあるから、簡単に趣味に合うものが見つからないかもしれない」と考える。そのため、娯楽を重視する消費者は、総じて豊かな品揃えを歓迎するようになる。しかし、平日の仕事用など実用的なニーズについては、独自のこだわりがあると考える人は少ないのではないか。