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変革において社員たちの協力を引き出す法
マネジメントの基本は、社員および関係者たちが協力し合える環境を整えることだ。経営者は目的を達成するために、オーケストラの指揮者のごとく多彩なメンバーの才能と行動を導く。これは一筋縄ではいかない。
従来の手法を続けるのではなく、変革を促す場合はとりわけ複雑だ。新たな目標に向けて社員の協力を引き出すには、当代きってのCEOですらつまずきかねない。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の元CEO、ダーク・イェーガーによる改革を例に取ろう。1999年、生え抜きの逸材であるイェーガーは、就任の直後に「オーガニゼーション2005」というリストラクチャリング計画を掲げた。P&Gの社風を変えようと試みたのである。
ところが社内では、なぜいま大々的な変革が必要なのか、主力ブランドへの資金配分を削ってまで画期的な新製品に投資すべきなのかと、その是非をめぐって侃々諤々の議論となった。社内の抵抗を受けたイェーガーは、就任からわずか1年5カ月後に権力の座から引きずり下ろされた。
イェーガーが失敗した原因は、社員の協力を取りつけられなかったことに尽きる。企業変革には社内の協力が不可欠であり、そのためには、金銭的インセンティブ、動機づけ、研修プログラム、あるいは強権的マネジメントなど、さまざまな手法がある。有能な経営者もこれらの手法については知っているが、いざ活用する段になると、はなはだ心もとない。
各手法の効果のほどは、組織の置かれた状況によって異なる。本稿では、ハワード・スチーブンソンとジェフリー・クルックシャンクの共著『スチーブンソン教授に経営を学ぶ[注1]』のアイデアを借りながら、適切な手法の選択と変革を成功へ導くためのアプローチを紹介する。
目的と実現手法に関する合意度を見極める
我々は、長年にわたってマネジメントの成功と失敗について観察してきた。その経験から、企業変革を推進するには、2つのポイントについて社内の合意を形成することの重要性を確信した。
第1は、変革の目的や意義、優先事項など、変革によって何を得たいのか、あるいは、目的を達成するためには犠牲をもいとわないという決意である。
たとえば、マイクロソフトの社員たちは長年、「デスクトップ・コンピュータ市場の覇権を握る」という目的の下に結束してきた。その結果、他社のように社内の抵抗勢力に悩まされることなく、目的の共有化という強固な社風を築き上げた。
第2に、変革に先立って、原因と結果についても社員たちの合意を得なければならない。すなわち、目的とその実現手法の因果関係について社内の認識を一致させるのである。これが、変革プロセスのコンセンサスを築く。P&Gの変革では、この点が欠落していた。