2008年のリーマン・ショック以降、世界は先の見えない不安のなかに生きている。世界経済は回復の兆しと崩壊の予感との間で揺れている。企業は金縛りの様相だ。産業界は2兆ドルもの現金を抱えながら、リスクに怯え、安全策に徹するあまり、新鮮なアイデアが著しく欠如している。いまほど世界が創意と勇気を必要としている時はない。いま必要なのは緊縮(austerity)ではなく、蛮勇(audacity)ともいうべきアイデアだ。
本稿では、こうした観点から各界の権威および第一人者にお願いして、大胆な提言を寄せていただいた。これらは、巨大で困難な難問に手をつけると同時に、社会経済全体を改善してしまおうというアイデアであり、大胆不敵だがけっして無謀なものではない。真のビジネスチャンスを示すものともいえるだろう。これらの話は一方的な講義ではなく、議論のきっかけとなるものである。
1.「国家株」による危機回避策
エール大学 教授
ロバート J. シラー