-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
アメリカの学校教育の質の低下が著しい。OECDの2009年国際学力調査で、アメリカは加盟国中、数学25位、読解力17位、理科22位という結果に終わり、トップの中国とは大きく水を開けられた。国内調査でも習熟度の低さや人種間格差などの問題が目立ち、産業界で求められる大卒者の供給も不足傾向にある。長期的な国の競争力は学力テストの得点と相関性があるとする研究も発表され、まさに憂慮すべき事態である。教育の質の向上においてカギとなるのがITの活用である。習熟度に応じた教育ソフトの活用や、対面とオンラインでの指導を融合させることで、生徒の習熟状況に沿った個別指導が低コストで実現できる。実際に、自習用ソフトウエアをうまく取り入れて低所得世帯の子どもの学力を向上させた地域や、完全個別指導プログラムで成果を上げている事例もある。このような取り組みをさらに強化していくことが、学力向上や国の競争力につながる。
国の長期的成長には
学校教育の見直しが不可欠
2008年、スタンフォード大学の経済学者のエリック・ハヌシェクは、ある国のGDP(国内総生産)と、その国の子どもの学力テストの得点との関連性を調べる新たな方法を編み出した。そして、1960年時点の国の得点が他の国の得点よりも、標準偏差でわずか0.5高いだけで、以後2000年までその国のGDPが毎年1ポイントずつ速く成長していたことを発見したのである。
マッキンゼー・アンド・カンパニーはハヌシェクの手法を用いて、アメリカが成績上位国との学習到達度の差を縮めていたとすれば、2010年におけるアメリカのGDPは、実際よりも8~14%、金額にして1.2兆~2.1兆ドル増加していた可能性があると推定している。この報告書の作成者は、そのギャップを「国の永続的な景気後退を経済的価値に換算したもの」と評している。