賢明な企業が取り組み始めた炭素リスク対策
世界的に、ますます極端な気象になるにつれて、気候変動が企業にもたらす脅威は、もはや机上の空論ではなくなっている。激化の一途をたどるハリケーン、熱波、森林火災、干ばつの被害から、自社の資産やサプライチェーンを守ろうと企業は取り組んでいる。ますます多くの企業がこうした「気候変動リスク」を勘定に入れるようになり、投資家は細心の注意を払っている。
しかし、関連する脅威のうち、多くの企業が十分に掌握してこなかったものがある。炭素リスク──気候変動政策が企業の戦略や収益に及ぼす影響だ。地球温暖化が進むにつれて、政府の対策がより厳しくなり、自国の二酸化炭素(CO2)排出権価格の上昇につながるだろうと、企業は予想している。こうした仕組みによって、準備不足の企業は脇に追いやられるおそれがある。
本稿では、より多くの企業が将来に備え、かつ、その中で成長していくために用いられる手法、内部炭素価格制度(internal carbon pricing:インターナル・カーボン・プライシング)について説明する(図表1「内部炭素価格制度の台頭」を参照)。これは基本的に、社外の炭素価格を加味しながら、自社独自の排出量の金銭的価値を設定するというものだ。2017年、内部炭素価格制度を積極的に活用している、もしくは計画中だとする企業は約1400社に上った。これから見ていくように、企業は独自の炭素価格を設定することにより、投資評価、リスク管理、戦略策定をよりよいものにできる。