倫理については善意の人も
他人の影響を受けやすい

 フォルクスワーゲンの排出ガス不正問題から、大手銀行ウェルズファーゴの不正営業、ウーバーの個人情報の不正流出まで、世界中で企業の不祥事が後を絶たない。非倫理的な行動は、企業に対する社会全体の信頼を悪化させることはもちろんだが、各社の評判をおとしめ、従業員のモラールを悪化させ、規制コストを引き上げるなど、各組織にも大きな負担となっている。

 ルールを破って他社を出し抜こうという経営者はほとんどいないし、大半の企業は組織内のどのレベルでも、不正行為を防止するプログラムを用意している。とはいえ、これだけ不祥事が続いているという事実は、もっと改善すべき点があることを示唆している。

 倫理的な行為を奨励する施策は、違反がどのように起きるのかを正確に把握しないまま実施されるため、狙いほどには効果を発揮できないことが多い。各社のコンプライアンスプログラムは、法律を倫理に厳格に適用して、自己責任を追及する方向にシフトしてきている。従業員を教育し、不正を働く「腐ったリンゴ」の悪行を罰する設計になっているのだ。ところが、行動科学に関する多くの研究論文によると、広い見識を持った善意の人々でさえ、倫理に関しては意外と他人の影響を受けやすい。