人材開発・組織開発を専門とする立教大学経営学部の中原 淳教授は「イノベーションが生まれないのには、組織的要因が大きい」と話す。何がイノベーションの創出を阻害しているのか。イノベーションを生み出す組織開発の在り方について聞いた。

立教大学 経営学部 教授
中原 淳
Jun Nakahara
北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業。大阪大学大学院人間科学研究科、米マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等を経て、2018年より現職。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発について研究している。
中原 淳
Jun Nakahara
北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業。大阪大学大学院人間科学研究科、米マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等を経て、2018年より現職。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発について研究している。
「日本人はクリエイティブではないなどといわれますが、本当にそうでしょうか。イノベーションが生まれない原因は、組織内の同調圧力や足の引っ張り合いなどにより、いいアイデアが出ているのにつぶされているか、新規事業が生まれているのに社内の協力が得られず育たないからです」
立教大学経営学部教授の中原 淳氏はそう指摘する。
イノベーションが生まれない要因としてよく指摘されるのは、「事業創造をけん引するクリエイティブな人材がいない」といった個人的要因と、「事業創造にチャレンジする風土がない」といった組織的要因の2つだ。しかし中原氏は、組織的要因が圧倒的に大きいと言う。中原氏が立教大経営学部助教の田中聡氏と共に行った「事業を創る人と組織に関する実態調査」でも、新規事業の失敗には、既存事業から必要な支援を得られない、社内から懐疑的、否定的な意見が上がるなど、組織的要因の方がはるかに大きいことが分かっている。
「人はもともとクリエイティブな存在。それが失われてしまうのは、組織の問題です。例えば、小学生のうちは図工好きな子どもが多いのですが、中学、高校でそうした子どもは少なくなる。『独創的な絵』よりも『写実的な絵』が評価されるようになり、クリエイティビティを発揮できなくなるからです。クリエイティビティは『発揮しない方が得』という組織風土においては、合理的に失われてしまうものなのです」