内部昇格ならではの障害に直面する
現経営陣の一人を新しいCEOに指名する場合、事は簡単に運びそうだ。たいがいは長年懸命に働いてきた結果の昇進である。内部昇格するCEOは、その会社の経営幹部や大きな部門の責任者を務めていたケースが多いので、経営陣全員と関係を築き、取締役会にも信頼されている。会社やその歴史、文化を知っている。会社の戦略を理解し、場合によってはその策定に直接関わった可能性もある。信頼を築き、支援されている。だから外部登用者に比べて、CEOという仕事に慣れるのも、そのポストで力を発揮するのもラクなはずだ。
ところが実際には、内部昇格したCEOは外部登用者と同じレベルの障害に直面する。ただし、その中身は異なる。筆者らは、調査研究や新任CEOと仕事をした経験から、内部昇格者にとっての5つの課題を明らかにした。(1)自身の過去のイメージから抜け出す、(2)支援者たちを驚かせ、失望させる決定を早期に下す、(3)かつての仲間を監督する、(4)変革のスピードを調整する、(5)退任するCEOのマネジメントを行う。
それぞれの内部昇格者ごとに、これらの問題が表れる程度は異なる。本稿では、多くの内部昇格CEOとのインタビューをもとに、5つの課題への処し方をアドバイスする。これはトップの仕事を成就したいと考えるリーダーだけでなく、退任するCEO、人事部門、経営陣、そして支援を提供しようとする取締役会にも役に立つ。なかには、もっと下の階層での引き継ぎに適用できる教訓もある。